《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~
「退治は夜なのよね…」


「ああ~それまでに神社の裏の滝で禊だ…花奏」


「禊(ミソギ)??」


「躰を清めて、妖を待つ…」


「急に言われても白装束の準備は?」


「神主が用意してくれるそうだ」


「・・・」


「心も躰も清めて、妖を迎え撃つ…。『陰陽師』としては基本中の基本だ…ちゃんと覚えておけ」


「はい」


俺の軽い叱責に、凛とした返事を返す花奏。

乾いた砂が水を吸うように、このまま、どんどんと一人前になって欲しいと俺は強く願う。



普段の俺は完全に煩悩を断ち切り、確かなモノしか心の中に残されていないはず。
なのに、花奏を見ているとその確かなモノが崩れ去り、不埒なキモチばかりが心に溢れ、激しい餓えが心と躰を蝕む。



本当に花奏は俺を惑わせる罪な女。


「どうしたの?知弥…」


「別に…」


俺は先に、腰を上げた。





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