《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~
弱々しく儚げな滋弥が俺の双眼に映る。


場違いな吸血衝動が躰の中で起こっていく。滋弥の姿が紅に見える。


喉奥から湧き上がる餓え。

その餓えは心臓をも、激しく高鳴らせた。魂を揺さぶり、頭に鈍器に殴られたような激痛が走った。俺は膝を折り、項垂れる。



頭骸骨が砕け、何かが飛び出して来た。


指先に触れた感触は鋭利な刃のよう。
それが2本…しっかりと俺の頭に生えてきた。
口許からも牙が現れる。

「鬼?」


天狐は俺の姿を見て、神妙に呟く。



俺の中で眠る『紅月』の力が覚醒した。



「…鬼の力を借りなければ…お前には勝てない…」


俺は拒まず、紅月の力を自ら受け入れる。時間に余裕等ない。

花奏を救うためには天狐を倒せねば。


その一心で紅月と同化した。



「お前は…紅月?」


「完全な紅月じゃない。我が名は緋月(ヒツキ)…よくも俺の弟を可愛がってくれたな…血の宴の始まりだ!!」



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