《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~
触れたら、脆く散ってしまいそうな小さな花。



咲き誇る桜の花の刹那的な美しさに心惹かれる。



「・・・今宵の月も美しいですね…。しかし…満ちた月は…妖たちに大いなる力を授ける。貴方のようなお美しい方が夜歩きなどしては危ないですよ」



「!!?」


一人の公達が私の庭に姿を現した。



霞のかかった月明かりの中。


芳しい香に闇の色には染まらない橙色の直衣。
切れ長の瞳が私を見つめ、薄く形の良い唇は笑みを浮かべる。


光の君を思わせる容姿。



私は一瞬、公達に心を奪われながらも、自分の見窄らしい衣を見て、その場を逃げようと踵を返した。






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