坂田家の日常
家に帰ると、菜緒子がリビングで雑誌を読んでた。
「何してんだ?」
「ん〜、今年のバレンタインチョコ、何作ろうかなって」
「ふーん」
「尚斗兄は何が食べたい?」
「俺、今年いらない」
「そっか。そうだよね」
うんうんと頷く菜緒子。
「またあんな事件、起こらないといいね」
「…………」
嫌な事を思い出させるなよ……。
「あの時の尚斗兄、ちょっと可哀想だった」
「あれがちょっとで済むか?かなりだろ」
「確かにね、」
あんまり思い出したくもない。
いや、できれば絶対思い出したくないあの記憶。