妄想LOVER

…好き。

「あ、葵くんが…好きだよ。だからそんなこと言わないで…。」


「…それは俺と同じ“好き”ですか?」


「うん。男として…葵くんが好き。」




いつも気にかけてくれて、
私が仕事しやすいように配慮してくれた。

さりげなく手を差し伸べてくれるのも…
仕事の合間を見て、食事に誘ってくれるのも…
たまに見せるいとおしい眼差しも

全部、彼の優しさだった。愛情だった。



もしかしたら…と思わなかったこともない。

でもそれに蓋をしたのは私。

間違ってたら恥ずかしいから。
傷つきなくない。―…アノ時ミタイニ。

こんな私を好きなんて…そんなことあるわけない。と見ないふりをした。



彼の優しさが嬉しかった。
優しい眼も、ゆったりと紡ぐ言葉も…
いつからか、葵くんは私の特別になっていたんだ。




「…だから、さっきの忘れてとか、担当外れるとか…言わないでね?」


勘違いされたくない。
私は葵くんが好きだから。

自分の気持ちを自覚したら、とても楽になった。
素直に言葉が出てくる。



腕を掴んだいた手に、葵くんは自分の手を重ねた。



「…本気にしますよ?」


「うん。」


「もう…離しませんよ?」


「うん。」


「こんな俺ですよ?俺、独占欲強いですよ?それに優しくなんてないですよ?」


「そんな葵くんだから、好き。」


「香月さん…愛してます。」


「…うん。私も。」



手を引いて、抱き締められた。



私の背中に回された葵くんの手は震えていた。




「…ずっと…胸に秘めているつもりでした。ご迷惑をお掛けするだけだから。
でも…夢のようです。嬉しいです。」


「うん。」


「香月さん。俺と付き合ってください。」


「…はい。」



私も葵くんの背中に手を回して、力一杯抱き締めた。



私の担当者は、私の彼氏になった。
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