妄想LOVER

セイちゃんと絵本。

「よし、オッケー。あとは推敲してもらうわ。お疲れさん。」


セイちゃんの言葉に現実に戻って、笑顔になる。


「良かった!」



原稿をトントンと揃えながら、セイちゃんが真顔になった。

「あ、お前に言わないかんことがある。」


「ん?」


「俺、来月に部を移動する。お前を担当するのはコレで最後。」


「…は?えぇぇぇぇ?!」


「うるせぇなぁ!!
んで、新しい担当紹介してぇんだけど…どこ行ったんだ?」



……セイちゃんが担当から外れる…。
小説を書きはじめてから3年…ずっと担当してくれて、私のことをよく知ってくれてたセイちゃんがいなくなる…。



「…セイちゃん、本当に?なに部に異動するの?」


「んな顔すんじゃねーよ。一生の別れでもあるまいに。
異動先は【童話絵本部門】だ。」



……セイちゃんが童話絵本。



メルヘンな絵本。えほん。



「ぎゃーはははははは!!」


後ろではハナちゃんが後ろを向きながら口元を隠している。
だが、肩がものすごい勢いで上下しているのは隠せていない。



「ひぃーっぎゃふっははーはははは!」


「その気持ち悪い笑い方をやめろ。クリス!!クリスどこ行ったー!」



お腹が爆発するかと思うくらい笑っていると、


「編集長。クリスじゃなくて、来栖(クルス)です。」


蕩けるような美声が背後に響いた。


え、誰ですか?



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