空の記憶
「薮城葎哉って言ったらフランスでも有名だったんだぞ。」
「まぁそうかもな。」
「でも両親の事は翼裟のせいじゃないだろう。」
「俺のせいなんだ。俺が生まれなければ葎哉君も郁哉も親を失わずにすんだんだ。」
「そんなこと言うな!」
「淡路君…?」
「俺は妹が生まれた事で母方も父方も跡取りが必要な家柄だったから二つとも背負うことになった妹にはそんな苦労させたくないから…好きな人と幸せに暮らす両親のような生活を送って欲しかったから…それに妹と両親はずっと日本で暮らしてた。俺はずっと生まれてから祖父母のもとで暮らしてた。俺も君と同じなんだ……両親との記憶なんてないに等しい…」
「だから俺に興味をもったの?」
「それもあるけどギター。」
「ギターがどうかした?」
「放課後にいつも練習してるだろ?その音を聴いてた。お前が欲しい。俺とバンド一緒にくまないか?」
「俺と…?」
「ああ。メンバーはまだ決まってないけどな。」
「なら旭と銀朱と舞杜だ。」
「えっ?」
「あいつらは天才的にうまいんだ。」
「折城(オリシロ)と北荻(ホクテキ)と黎泉(レイゼイ)か?」
「ああ。銀朱は世界でも有名なドラマーのGINSHUで旭はよく兄貴の知り合いの音楽編集を任される程の腕前だ。舞杜はデザインセンスが抜群にいいのと編曲が全てできるんだ。あいつが居ればCDを自分達だけで作る事ができるんだ。」
「すごいじゃないか…なんで今までやらなかったんだ?」
「俺が三人を避けてたから…ずっと誘われてたけど俺のせいで夢を諦めた兄貴にはそんなこと言える勇気がなかったんだ。葎哉君はきっと笑顔で応援してくれるから。」