空の記憶
葎哉君の夢を壊したのは俺だ。
郁哉から父さんと母さんを奪ったのも俺。
俺が生まれて来なかったら二人は両親と一緒に楽しく暮らしていたんだろう。
俺はきっとこの家では要らない存在だったんだ。
だから名前だって兄弟で一人だけ違うんだ。
俺が名前と性格で虐められて居たことなんて知らなくていいんだ……
俺に出来ることは家族を安心して暮らしていけるように養うことだけ。
もうあの頃の自分に戻れる自信がない。
そんな枯れた心に水を与えられるのはギターを弾いている時だけかもしれない。
でもこれでいいんだ。
俺が死んだときに二人の記憶に俺が居ない方が幸せなんだ。