二人のひみつ基地

私と光哉も和樹と亜美も愛子の後に続いた。

チケットを渡して暗い廊下を抜けて中にもう一つあるドアを開ける。

ざわついた中はもう四、五十人くらいいてギュウギュウ詰めの状態だった。

観客側のライトはすでに落とされていてステージだけが浮かび上がっていた。

私たちは入口のドアから奥の場所に入った。

会場自体が扇形になっているらしく一番端っこでもステージが良く見えた。

楽器が置かれた小さなステージには小さいながらもスポットライトが照らされている。

防音設備が施された真っ黒い壁に囲まれたスペース。

その中のステージ上にはキーボードにギターにベースに青いドラムにライトが当たってキラリキラリと光っている。

スポットライトを浴びた楽器たちがこんなに綺麗な物なのかと思うくらい目を奪われた。

楽器が絵になる。

不思議な感覚で見ていた。

この楽器たちを奏でる人たちに、この楽器たちはとても大切にされているんだとなぜかそう感じた。

時間が来て、照明が落とされて回りの人たちのざわめきが嘘のように静まり返った。

その中でステージ脇から五人の男の子が出て来た。

常連客と思われる人達が大きな拍手で彼らを迎えた。

自分たちの持ち場に着いてドラムのスティックが鳴りいきなり演奏が始まった。

私の隣の愛子は演奏が始まったと同時に悲鳴を上げた。

もう、半狂乱の状態で悲鳴を上げた。

このまま狂って倒れるんじゃないかと思った。

それはマイクを持ったボーカルが……


陸君だったからだ。


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