二人のひみつ基地
「沙織ちゃんでしょ?」
「ひっ……久しぶり。伊織君」
見つめ合ったまま、手を握り合ったまま、私と伊織君は再会を喜んだ。
私の後に居た女の子が
「ちょっと、早くしてよ」
ボウとした私を急かしてきた。
「あっごめんなさい」
私はそう言って伊織君から離れて最後に立っていた陸君と握手をした。
「今夜はありがとう。森山さん。あいつと……伊織と知り合い?」
「うん、小学校の時の……」
「元、彼女だよ」
そう言って何時の間にか私の隣に来ていた伊織君が私の肩に手を回して抱き寄せて来た。
私より背の低かった伊織君なのに抱き寄せられた私はすっぽりとその胸の中に納まった。
「元彼女?」
陸君の驚いた顔より愛子の
「えーっ!」
と言う大声と周りに居た伊織君のファンの子たちと思われる嫉妬の叫び声と冷たい視線を私は伊織君の胸の中で浴びせられた。
「伊織君?あの……彼女って言うのはちょっと違うような……」
「俺、今、スゲー傷ついた。沙織ちゃんの俺の位置づけは違ったの?」
確かに……今思えば彼氏のような存在ではあったが……
告白した記憶もされた記憶もないけど
「いえ……彼でした」
「うん、やっぱり沙織ちゃんは良い子だ」
そう言って頭を撫でて来た。
伊織君……軽い?
物凄く……軽くなった。
「ごめん。今の彼が睨んでるから沙織ちゃんを返さなきゃ」
伊織君はそう言って私を解放して真顔で睨んでいた光哉に私を差しだした。