二人のひみつ基地
ホームに電車が入って来て私は伊織君と一緒に電車に乗り込んだ。
「さすがに空いてるね」
「うん。座る?」
「三つ目で降りるからこのままでいいよ。これ……邪魔だし」
伊織君は立ったままキーボードを撫でてそう言った。
「家に帰らないの?」
伊織君も私と同じ駅で降りるはずだと思っていた。
「あっ!沙織ちゃんも一緒に来てよ。俺たちのひみつ基地に」
「えっ?ひみつ基地があるの?」
「うん。俺達シークレットのひみつ基地」
その懐かしい響きが私の好奇心を駆り立てた。
「行く。本当にあるの?ひみつ基地」
「沙織ちゃん、ひみつ基地に食い付いたね」
そう言ってあのファンの子たちが歓声を上げそうな顔で笑った。