二人のひみつ基地
電車を降りて二人並んで夜道を歩き出した。
暫く無言で街燈がポツポツと点灯している市道を歩いた。
「あれ?」
頬に冷たい物が当たり私は空を見上げた。
すると急に物凄い量の雨が降り出した。
「やべぇ」
伊織君が真っ先に庇ったのは肩に掛けたキーボードだった。
私たちは目に入ったシャッターが降りた薬局の軒下に飛び込んだ。
「凄い雨だね」
「うん。このままじゃ身動きとれないな」
「どうする?」
伊織君は一回空を見上げてから
「これ、ちょっと預かってくれる?俺、今から走って傘を取って来るよ。ひみつ基地に置いてあるんだ」
私は伊織君からその大事なキーボードを受け取って、伊織君は真っ暗な雨の中を濡れながら走り出した。
雨脚は強くなり私はキーボードを抱え込んで背中を向けて少しでも雨に濡れないようにして伊織君を待った。