二人のひみつ基地
この雨の中……
傘もささずに伊織君はきっとびしょ濡れだ。
そして……キーボードを庇った状態の私の背中もびしょ濡れだった。
暫くすると傘を二本持った伊織君が現れた。
「このゴミ袋にキーボードを入れて持つよ」
「うん」
伊織君はキーボードにゴミ袋を被せ始めた。
「沙織ちゃん……ごめんね。これを庇ってくれて背中がびしょ濡れだよ」
「うん、平気。伊織君こそびしょ濡れだよ」
私たちはお互いの顔を見て急に笑い出してしまった。
折角のバッチリメイクも台無しだ。
伊織君も髪を逆立ててきめていたのにぺしゃんこになっている。
「こう言うのってぬれ鼠って言うんだよね」
「うん」
ここまで濡れると傘も何もない気がしたが私は前を走る伊織君に続いて
ビショビショになったパンプスを手に持って勢い良く走り出した。