二人のひみつ基地
「沙織ちゃん……風呂入る?このままじゃきっと風邪引いちゃうよ。さっき来た時に湯船にお湯入れっぱなしにして来たから、もう直ぐ溜まるけど」
「入りたいけど着替え持ってきてないし……」
「俺の服なら貸すよ。濡れている服は除湿機で乾かせるし。ちょっと時間かかるけど」
伊織君はバスタオルで髪を拭いて着ていたブラウスを脱ぎ始めた。
「じゃぁ借りようかな。でも、伊織君が先に入りなよ。伊織君の方がたくさん濡れているから」
「いや、沙織ちゃんが心配だよ。俺はライブとかで雨に濡れるの慣れてるし」
ほんの……冗談のつもりだった。
子供の頃によく伊織君に言っていた言葉
自分では何の意識もしていなかったその言葉
でも……
その一言が……伊織君の逆鱗に触れ
その一言が……私と伊織君の捻じれた世界への扉を開けてしまった。