二人のひみつ基地
「風呂の中から伊織が女の子と喋っている声が聞こえて、玄関の床も濡れていてさ、そのままアンプも置けずに帰ったんだ」
そう言って陸君は私の方を向いてきた。
いつも優しい目をしているのに少し違う。
その眼が堪えられなくて、なにも言いわけせず、きつく眼を閉じた。
「翌朝、もうお昼前だったけど、お母さんの買い物ついでにもう一度アンプを返しにひみつ基地に行くとマンションから伊織と沙織ちゃんが出て来てさ。驚いて隠れたんだけど……」
話をとぎったまま冷めた視線を絡めてきた。
「正直言って沙織ちゃんには驚いたな」
一緒にお風呂に入って、一晩中二人で居て何もなかったなんて誰が信じてくれるだろうか?
何にも弁解なんて出来ない。