二人のひみつ基地
愛子の気持ち
だれも居なくなった校舎の中をゆっくりと歩いた。
カバンを取りに教室に入ると、愛子が私の席の前で泣いていた。
「愛子?どうしたの?」
私が駆けよると愛子が伏せていた顔を上げた。
「り……陸君に……怒られた……」
「えっ?」
「嘘つきは嫌いだって……言われた」
あの強い愛子が声を震わせて泣いていた。
「愛子が嘘つき?」
「り……陸君。沙織の事ばかり気に掛けるから、沙織は光哉と付き合っているって嘘ついてたの」
だからさっき陸君は私に彼を裏切っちゃいけないって言ったんだ。
「光哉の気持ちは前から知っていたから、土曜の夜、私が光哉に告白しろってけし掛けたの。だって……沙織に陸君渡したくなかったんだもん」
「愛子……」
愛子は私の席に座って顔を伏せた。