二人のひみつ基地


私はベッドから飛び起きて携帯の通話ボタンを押した。


『俺……伊織だけど』


「うん。久しぶり」


『あ……あのさ、陸に聞いたんだけど、沙織ちゃんお多福風邪で二週間も学校に来ていないって聞いてさ。具合どうなのかなと思って……』


「心配して電話くれたの?」


『うん。意外と元気そうだけど』


「もう、さすがに良くなったよ。最初は四十度近く熱が上がってもう死ぬかもって思った」


『うん、俺も小さい頃なった記憶があるから分かるよ。大変だったね』


携帯を耳に当てたままベッドに寝転んで天井を見上げた。


「今、家に居るの?」


『ううん。ひみつ基地。今夜はこっちに泊まるつもり』


「ふーん。バンドのみんなと一緒に?」


『うん、さっきまで居たんだけど、今、帰ったとこ』


「伊織君一人で泊まるの?家、近くでしょ?」


『うん、ちょっとさ、家に帰り難いんだ』


「どうしたの?」


『大した事じゃないんだけどね』


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