二人のひみつ基地


「それならいいけど……あなたも一応女の子なんだからさ、男の子は何時オオカミに変わるか分からないから気を付けるのよ」


私は笑い飛ばしながら


「オオカミって……その言い回し昔っぽい」


お母さんがいきなり私の顔を両手で包みこんで


「今も昔も男はオオカミに変わるもんなの。あんまり無防備にしてると隙を突かれるって事。お母さんは沙織が心配な……」


「どうしたの?」


お母さんの表情が固まった。


「沙織……口の周りにたくさん血がついてるわ。口の中も怪我したの?」


いきなり伊織君とのキスがフラッシュバックした。


伊織君の血だ……。


「うん、そうみたい。顔洗ってくる」


洗面所に駆けこんで電気を付けて鏡を見た。


確かに口の周りや頬に血が付いていた。


情けない顔をした自分の顔に伊織君のキスの後が残っている。


そんな自分を見てまた涙が溢れてきた。


自分の部屋に入ってカバンから携帯を取り出してベッドにゴロンと横になった。



そして、伊織君に無事に家に着いたとメールを打った。


直ぐにメールが帰って来た。


三日後の朝10時からこの前のライブスタジオを借りてバンドの練習をするから見に来ないかと書かれていた。


私は直ぐに「「行く」」と返信メールを打った。


「「待ってる」」と伊織君からまたメールがあった。



< 73 / 95 >

この作品をシェア

pagetop