二人のひみつ基地
陸君に背中を向けていた伊織君が今度は陸君の肩に手を添え少し宥めるように
「陸……言い難いんだけど……主催者の奥さま方が曲中に衣装を着けてサンバを踊りたいって言うんだけど」
「……?」
放心状態の陸君と暫く見つめ合っていた伊織君が頭を抱えてその場に座り込んだ。
「はぁ?何だよそれ。そんな話聞いて無いぞ……サンバって……?」
頭を抱えたままの伊織君がそのままの状態で呟く。
「多分、主催者はその奥さま方がサンバを踊りたいが為だけに俺たちにそんな意向を示してきたんだと思うんだ」
「……」
「俺だって……陸の歌い方とか、陸から出ている雰囲気とかサンバに合わない事ぐらい分かるよ。だって、陸の回りをサンバ衣装を着けた奥さま方がバックダンサーとして踊っているとこ想像つかないもん」
「……」
陸君、マイクを持ったまま倒れそうだ。
ドラムの健也君がスティックをカチカチ鳴らしながら笑いだした。
「ハッハッハッ。それっ最高。どうする?伊織、アコースティックギター諦めるか?」
「陸はパソコン諦めるか?俺はどっちでもいいぞ」
ベースの海人君とギターの幸広君も笑いだした。