二人のひみつ基地
「俺ね、小学生からずっと親に無理やりドラムを練習させられててさ、中学に入るとバンドを組めって煩く言われてたんだ」
健也君が笑いながら話し出した。
「それで中学に入って直ぐの音楽の授業で伊織がピアノを弾いてて、こいつを絶対バンドに入れようってその日に声を掛けたんだ。話を聞くとギターの方が好きだって言うし、もう強引にバンドに引き入れたんだ」
「そうだよ。俺は右も左も分からない純情な子だったから健也の勢いに負けて返事をしてしまってさ、今じゃもう抜け出せなくなってる」
ジュースとお絞りをテーブルに運んできた健也君のお母さんが
「最初ここに来た時の伊織君、可愛かったわよ。オドオドしててね。指で突いたら泣きだしそうだったんだから」
小学生の頃の伊織君を思い出した。
確かにおどおどしていた。
「今、伊織を指で突いたら手籠めにされるぞ」
海人君がポツリと言う。
「海人、下ネタ言うなよ。女の子の前でさ」
陸君が口を挟んだ。
「陸君はいつシークレットのメンバーになったの?」
愛子が陸君に尋ねると健也君が変わりに答えた。
「陸はね、伊織が連れてきたんだよね。っか強引もいいとこだったな?」
「うん、陸とは中学二年の時に同じクラスで、修学旅行のバスの中で一人ずつ順番に歌を歌わされてさ、その中にすげー上手な奴が居たんだ。クラスでずば抜けてたね。それなのに前屈みに座席に座って顔を見せずに歌ってるんで最初は誰が歌っているか分からなかったからさ、俺、途中、座席を立ってバスガイドに怒られるのを振り切ってそいつを捜したらそれが陸だったんだ」
「そうだよ。バスを降りたら伊織と海人と健也と幸広にいきなり取り囲まれてさ、伊織以外は他のクラスの子だし、リンチに合うんじゃないかって心臓がドキドキしてたの覚えているよ」
陸君がその時の情景を思い浮かべたのか、胸を撫でながらそう話した。