彼氏に一方通行
そう。瀬那くんは、一ヶ月間付き合った彼女に、引っ越しを理由にふられたのだ。でもそれって5月の話じゃん! いつまで引き摺るのだ、男の癖に……って、これも八つ当たりだな。


失恋とかそういうの、女より男の方が精神的にやられるみたい。何となく学んださ、私だってそれぐらい。



「私も瀬那くんに乗り換えよっかなぁー」

「『私も』って……。『も』って何よ? 田所は元々瀬那くんと仲良しじゃん。それも、ほのかと付き合うずーっと前からね」


すかさず綾子が指摘する。一々何だよもう……。


「瀬那くんの方が、カッコいいし、オシャレだし、いい匂いするし」


「ほのか、『田所の100パーセント無加工の香り萌えっ』って言ってたじゃん」


「それ、照哉くんの前で言わないでよ! まるで私が変態みたいに聞こえるじゃん!」


「違うの?」


綾子は冷ややかに目を細めて、私を見る。

信じられない。なんという薄情な。親友を『変態』呼ばわりするとは……。


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