彼氏に一方通行
「田所がハングリーなのはいっつもじゃん」

負けじと言い返せば、

「そうね、俺ってハングリー精神旺盛だからね」

シレッとそんなことを言う。



バッカじゃないの?


それにしても――

その食欲を、ほんの少しでも性欲に移行できないものだろうか。





何種類ものウォータースライダーに、テンションだだ上がりの私と田所。二人で片っ端から制覇していった。


けれど、どれもが長蛇の列で、当然の如く、並ぶ時間はスライダーを滑り降りる時間の数十倍。そのロスタイムに少しだけ苛々する。



四つ目に並んている時、突然、田所が私の背後にピタリと貼り付くようにして立った。

「何?」

振り返るようにして見上げれば、有り得ないぐらいの不機嫌顔。


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