彼氏に一方通行
「ひどっ。酷いよ、田所。だからなの?」

迫り上げてくるものを必死で堪えながらそう言ったけれど、見上げた視界の中、田所の顔が滲む。


そんな私を見てほんの少しだけ顔色を変えるも、「何が?」と、まだまだ余裕たっぷりで田所は平然と聞き返す。



「エッチしてくれないのは、私にくびれがないから?」

「は? お前、バカじゃねぇの? こんな公衆の面前で何言っちゃってんの?」

「もういいよ! くびれがない私は性の対象にはなんないんだよね? よーくわかったよ」

一応小声で、けれどかなり力んで罵声を発し、そうして一人、列から抜け出した。



確かに私はスリムじゃない。モデル体型なんかは程遠い健康体重だ。


おまけに胸もペチャンコ、色気なんか限りなくゼロに近い。



ああ、だからか……。


だから田所はその気になれないんだ。そう考えたら全部が納得。


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