彼氏に一方通行
「ごめん、俺『ブタ語』わかんねー。どんなに愛し合ってても、俺らには言葉の壁があるもんな、悲しいな、悲恋だな――

――てか重いわ! 離れろ! クソあっつい」


怒鳴られました。でも怖くなんかないもんねー。



田所をグラグラさせるのはひとまず止めて(恐らく田所はこれに一番苛ついた)、今度は田所の目の前へ移動することにした。どうしても田所の視界に入りたいから。


田所はヌンチャクリモコンを両手に握って、必死で操作している。その右腕をくぐって田所の懐に入り込む。


胡坐の中にお尻をスッポリ収めて、両足は田所の両脇から投げ出して。そうして首に両腕を巻き付けて、じぃっと真っ直ぐ見詰めた。



田所は視界を遮る私の顔を避けるように首を傾げ、その眼差しは尚もテレビ画面に釘付け。ちっとも視線が交わらない。


田所の首に両腕でぶら下がったまま、私も身体を横に倒し、しつこく田所の視界に入ろうと頑張った。


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