彼氏に一方通行
「バカか、てめぇ。こんなとこで騒ぎ起こしてどうするよ?」
瀬那くんに叱られて、田所はまるで子どもみたいにムスッとふてくされた顔をした。反省なんかちっともしていない。
「あーもう、何? この陰鬱な空気。もう帰るか? 照哉たちは楽しんでっから、俺らだけ先、帰ろ」
瀬那くんが投げ遣りな感じでそう言い放つ。咄嗟に私は瀬那くんの手を取って、
「私、瀬那くんと泳ぐ」
田所に向かって言った。
瀬那くんは、さり気なーく私の手から逃れようとしたけれど、そうはさせないとぎゅっと強く握りしめた。そしたら諦めたように、というか開き直ったように、瀬那くんも私の手を握り返した。
乱暴に振り払うなんてできなのは、私が彼女じゃないから。きっとどこかに遠慮があるんだ。
ということは――
田所が私に対して無遠慮なのは、私が彼女だから?
いいや、私なんかどうでもいいからに違いないんだ。
瀬那くんに叱られて、田所はまるで子どもみたいにムスッとふてくされた顔をした。反省なんかちっともしていない。
「あーもう、何? この陰鬱な空気。もう帰るか? 照哉たちは楽しんでっから、俺らだけ先、帰ろ」
瀬那くんが投げ遣りな感じでそう言い放つ。咄嗟に私は瀬那くんの手を取って、
「私、瀬那くんと泳ぐ」
田所に向かって言った。
瀬那くんは、さり気なーく私の手から逃れようとしたけれど、そうはさせないとぎゅっと強く握りしめた。そしたら諦めたように、というか開き直ったように、瀬那くんも私の手を握り返した。
乱暴に振り払うなんてできなのは、私が彼女じゃないから。きっとどこかに遠慮があるんだ。
ということは――
田所が私に対して無遠慮なのは、私が彼女だから?
いいや、私なんかどうでもいいからに違いないんだ。