彼氏に一方通行




レンタルしたでっかい浮き輪の中に並んで入って、瀬那くんと二人、流れるプールを漂う。



「悠斗と喧嘩した?」

隣の瀬那くんが唐突にそんなことを聞く。瀬那くんと私じゃ話すことなんかないから、唐突なのは仕方ない。


「んー。喧嘩っていうか……」

モソモソッと言って、すぐに口をつぐんだ。


何て説明したらいいかわからない。



「もしかして、俺のせい? ごめんね」

申し訳なさそうに言われ、隣の瀬那くんに視線をやれば、らしくないションボリ顔で私を見ていた。


「瀬那くんのせいじゃないよ」


ちょっとだけ瀬那くんにヤキモチ焼いていたけれど。でも田所が素っ気ないのは瀬那くんが原因じゃない。関係ない。

だから瀬那くんにヤキモチを焼くこと自体、バカげている。わかっているんだ、そのぐらい……。


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