彼氏に一方通行
「悠斗といると、気が晴れるっつーかさぁ、嫌なこと吹っ飛ぶんだよね。だからつい……」

「うん、わかる。田所、生粋のバカだからね。二次元に住んでるし」


瀬那くんは、ははっと声を漏らして笑った。



「今日も朝、いきなり誘ったんだけどさ、即、『一緒に行く?』って言われた。断れねんだよ、あいつ、優しいから」


そうなんだよ。田所はバカみたいに優しいんだ。瀬那くんは、その優しさに付け込んでいるんだよねーなんて。これは言ってはいけないよね。でも言いたい。



「『誰か連れて来いよ』って言われたんだけどね、好きでもない女の子、どうしても誘う気になれなくてさ」

そう、寂しげに呟いた瀬那くんは、私から視線を逸らして俯き水面を見詰めた。



「まだ……好きなんだよね?」

地雷かなーと思いつつも口にしちゃう、それが私。


「うん」

瀬那くんは小さく頷いた。けれど、バッと勢いよく顔を上げて再び私に視線を戻し、

「いい加減、諦めろよなぁ? 俺っ」

と、顔をくしゃっとさせて笑った。でもその笑顔は泣いているように見えて、こっちまで切なくなる。


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