彼氏に一方通行
「私の方こそ、意地悪なこと言ってごめんね。『一人で泳いで』とかさ」

真剣に謝ったのに、瀬那くんはフッと鼻を鳴らして笑う。何でよ?



「……で、何なの? 喧嘩の原因」

「だから喧嘩じゃないって」

「恋愛相談なら瀬那くんにお任せ、ホシッ!」



『瀬那くんにお任せ☆』

多分、文字で書くとこうなるんだろうなぁと思いながら、瀬那くんの朗らかな笑顔をぼんやり眺めた。


普段はクールな瀬那くんが、何故だか壊れ気味。これも失恋の後遺症? そんな彼に恋愛相談とか……。うーん。


でも――

誰かにこの不満を聞いて欲しいっていう思いが、無きにしも非ず。



「田所の気持ちが冷めたんじゃないかって、最近思う」

結局、言っちゃった。


「はぁ?」

瀬那くんは、ただでさえクルンとした大きな目を一段と見開いて、私をまじまじと見た。そんなに驚かなくても……。


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