彼氏に一方通行
「ああ、もう、ほのか、ジャマッ!」


とうとう苛々の限界が来たらしく、ようやく田所が私を見てくれた。ついでに私の名前も呼んでくれた。嬉しい。



「田所……」

「何?」

腹立たしげに、田所は問う。

でもいいの。田所が私の存在を認めてくれた、それだけで大満足。



「大好き」

「俺も」


チュン――

唇に一瞬だけ何かが触れた。まるで春風のように爽やかなそれ……。


というかさぁ、爽やか過ぎるだろ? 私はもっと濃厚なヤツを、ブチュッと希望。



「さあ、ほのかちゃん、どいてくれる?」

「なんで?」

不満げに聞き返せば、

「暑い、ジャマ、不快、イラつく、迅速な任務遂行の妨げとなる」

抑揚のない氷点下口調で返された。


< 5 / 59 >

この作品をシェア

pagetop