彼氏に一方通行
田所のお腹の横に両膝を落として正座し、

「田所」

ちょっと小さめの声で呼んでみる。


返事はないし、それどころかピクリとも動かない。


もう一度、今度は少しボリュームを上げて呼んだ。またまたノーリアクション。完全に爆睡中だ。何だよ。



「田所っ!」

バサッと私のパーカーを勢い良く剥ぎ取った。田所は眩しそうに、閉じていた目を更にギュッと固くつぶる。そうしてから、ゆるり、ほんの少しだけ瞼を持ち上げ、私をその視界にようやく入れた。



「何だよ? 瀬那と泳ぐんじゃねーのかよ?」

いかにも『寝起き』といった感じの、掠れた不機嫌な声で田所は言う。


「もう泳いで来た」

「『泳いで来た』って……。じゃあ瀬那はどうした? てめ、放置プレイか? ふざけんんなよ」


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