彼氏に一方通行
みるみる顔が熱くなって、その熱はすぐに全身に広がって……。とにかく熱い。ぶわっと額からも汗が染み出てくる。


何故だか今頃、足の痺れにようやく気付く。正座を崩したら、膝下に虫か何かが這いずり回っているような不快な痛みが走る。思わず顔を顰めた。



「何やってんの? バカじゃねぇの?」

言って、胡座をかいた田所は上体を前倒して、私の足をチョンチョンとつつく。


それは凄まじい刺激となって私を襲った。

「ぎゃあー、やめて」

咄嗟に田所の首に両腕を巻き付けしがみ付いた。


田所はそんな私の頭を右腕で抱え込み、そうして耳元に唇を寄せて、

「今日、泊まってく?」

掠れた甘い声で囁いた。


一気に痺れも痛みも不快感も吹き飛ぶ。



「うん。泊まる」

田所の右肩に顔を埋めたまま、迷うことなく答えた。


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