ひとまわり、それ以上の恋

「こういうのって受け取るものなんですか?」

「あの通り。副社長は追わないタイプでしょ? 個人的にとりあってくれないと、こうやって会社に届けたりするのよ。お得意様だと、ぞんざいには扱えないもの。ある程度は仕方ないのよね」

「そう……なんですね」
「私は社長について出張同行だから、あとは美羽さんと一緒にお願いね」

「解りました」

 峰岸さんが秘書室を出ていく。森重室長と話をしていた美羽さんがこちらに戻ってきて、声をかけてきた。

「菊池さんに連絡は入っていない?」
「はい……何も。なんだか心配です」

「もし都合がつくようだったら、会社終わったあと、様子を見てきてもらっていいかしら? 来週、とても大事な会議があって、副社長の不在では困ることがあるの。日程を調整したいから……おやすみするなんてよほどのことだと思うから、体調がどんな感じなのか知りたいのよ」

 何も連絡は入っていない。気になって電話を入れたのだけど、出てくれなかった。そんなに具合悪いのだろうか。

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