ひとまわり、それ以上の恋
「じゃあ、せっかくだから、いただきます」
「食欲はあるんだね。じゃあ、すぐに良くなるよ」
僕の方を見ない。彼女はポットに残ったハーブティを自分のカップにも注いで、それからそっと口づけた。
「円香、ありがとう」
彼女は驚いて顔をあげる。カップが震えそうになったので、慌ててソーサーに戻した。
ふるふると顔を横に振って、赤い頬を隠すように耳にかけていた髪を垂らす。隠しきれていない表情がなんだか憎めなくて、僕は笑ってしまった。
「どうして、笑うんですか」
「いや、別に。可愛いなって思っただけ」
みるみるうちに朱に染まる。頬だけだった赤みが顔から首にかけて広がって。
「ほら、そうやって、気を持たせるようなことするから、いけないんですよ? この間だって。私、もう同居人のフリはしませんからね?」
「はいはい」
「ハイは、一回です」
「いつまで言ってるんだ。もう結構前のことじゃないか」
「せっかく同期の子たちと仲良くなるチャンスだったのを、邪魔されたんですから」
「ハイハイ」
彼女とのやり取りは楽しい。何か心をくすぐられるような、可愛さがある。改めて円香を見つめて……由美さんの面影よりもたしかに拓海さんのはにかんだ笑顔を思い出させられた。
ふと壁にかけられているカレンダーを目に留めて、祇園祭のことが脳裏をよぎった。
「食欲はあるんだね。じゃあ、すぐに良くなるよ」
僕の方を見ない。彼女はポットに残ったハーブティを自分のカップにも注いで、それからそっと口づけた。
「円香、ありがとう」
彼女は驚いて顔をあげる。カップが震えそうになったので、慌ててソーサーに戻した。
ふるふると顔を横に振って、赤い頬を隠すように耳にかけていた髪を垂らす。隠しきれていない表情がなんだか憎めなくて、僕は笑ってしまった。
「どうして、笑うんですか」
「いや、別に。可愛いなって思っただけ」
みるみるうちに朱に染まる。頬だけだった赤みが顔から首にかけて広がって。
「ほら、そうやって、気を持たせるようなことするから、いけないんですよ? この間だって。私、もう同居人のフリはしませんからね?」
「はいはい」
「ハイは、一回です」
「いつまで言ってるんだ。もう結構前のことじゃないか」
「せっかく同期の子たちと仲良くなるチャンスだったのを、邪魔されたんですから」
「ハイハイ」
彼女とのやり取りは楽しい。何か心をくすぐられるような、可愛さがある。改めて円香を見つめて……由美さんの面影よりもたしかに拓海さんのはにかんだ笑顔を思い出させられた。
ふと壁にかけられているカレンダーを目に留めて、祇園祭のことが脳裏をよぎった。