ひとまわり、それ以上の恋
ここは外資系一流企業『プライマリー』。競争率は激しく、私が内定をもらえたのは本当に奇蹟かもしれない。
実は兄がここの総務課に勤めていて、縁故入社でもあれば、と縋りたい気持ちだったけれど、そんな権力はあいにくもっていない。
それに私はどうしてもここに勤めたかったから、業界のことをたくさん勉強したし、色んな資料を見て研究をした。私を変えてくれた存在だから。
プライマリーは、イギリス生まれの下着メーカーで、国内でもシェアトップを誇る人気ブランドを数々生み出している。
とくに三年前くらいにスイスの繊維企業と共同開発をはじめたことで更なるヒット商品を打ち出し、今ではプライマリーの名前を見ない日はない。
私は中学生の時から、プライマリーの下着に憧れていた。ショーウインドウや売り場で素敵だなと思ったりしていたけれど……。
なにせいいものは高いし、販売員がサイズを測りましょうか、と寄ってくるのが苦手で……母が買ってきてくれるスポーツブラばかりしていた。
高校生になって初めてバイトして、自分のお小遣いでブラジャーを買った。恥ずかしかったけれどちゃんとサイズを測ってもらって、バストのお手入れ方法やブラジャーの魅せ方まで教えてもらった。
Aカップしかないと思っていた私は、Bカップであることが判明。ほんのすこし浮かびあがった谷間のラインに釘付けになったことを今でも覚えている。
その日の私は天使の羽根に包まれているかのように軽やかな気分だった。