ひとまわり、それ以上の恋
中学の時に父が他界して、母と五歳年上の兄と静かに三人で暮らしてきた私は……、父や兄以外の男を知るよりも先に、すっかり下着に恋をしていたのだ――それが一度目の恋。
内定が決まったときは本気で泣いて喜んで、家族で盛大にお祝いをした。
(こうなってから初めて、兄が何故プライマリーを選んだのか、そして私と同じように試験でどんなプレゼンをした内容が気になっているのだけれど、恥ずかしがって教えてはくれない。)
一応、希望の部署は、企画、販売、と考えているのだけれど、一年目から希望の配属になる確率は低いのだとか。社員の兄が言うのだから間違いない。とにかく入社してプライマリーの一員になれただけで十分満足だった。
二度目の恋は……、あの日、市ヶ谷さんとの出逢い。
叶わずにそっと終わっていく、ほんのときめきのようなものだと思っていた。