ひとまわり、それ以上の恋
菊池円香――彼女を秘書に抜擢したのは、人事部長の矢崎《やざき》との話で今年の新人で面白い子がいると聞き、営業部のエースも真っ青になるほど立派なプレゼンの内容を聞かせてもらったことがきっかけだった。
彼女のプライマリーに賭ける熱意は並みのものじゃない。企画や商品開発部の方へ行きたいと言っていたので、どうしようか考えている、と相談された。
プライマリーでは適正を優先し、希望に叶うことは稀だ。それには理由がある。最初から希望を叶えてしまってはそこで闘争心や向上心が第一段階で満足してしまう。
大抵自己評価というのは甘く、自己分析というのもあてになることは少ない。自分自身をより冷静に深く理解している人間などそうそういないものだ。他人から言われて見つかる才能もある。プライマリーはそういう方針だ。
悩んだ末、彼女は営業に行かせてはどうだろかと矢崎は検討しているようであった。