ひとまわり、それ以上の恋
オックスフォード大学時代に、図書館の書架をうろついて手に取った有名な心理学者の著書の中に、興味深い内容が記されていた。
――人はデジャブに恋をする。それが一目惚れの心理である。
「Love at first sight」
自分の記憶が曖昧であるが、一度会っているはずの相手に、なにかの偶然で再会したとき、高確率で……恋に落ちる可能性がある。それは、デジャブが手伝ったもの。
つまり恋ではなく錯覚であることが多い――という。
僕は妙に納得していた。
僕たちは、入社説明会のとき以前にも、会ったことがあるからだ。
そして彼女にそれを言ったのなら、果たして納得してくれるだろうか。