ひとまわり、それ以上の恋
 ……今の嫌味……なのかな? 

 市ヶ谷さんに、君だから頼みたいと言われたことを思い出す。きっと大人の女性だったら別の関係を迫っていたかもしれない。それに比べて私は眼中にないってことを言いたいのかな。

 それに、嵯峨野さんもスタイルよくてキレイだ。販売部門の女性は……こんな人ばかりなのかな。秘書課のお姉さまたちだけでなく、プライマリーの戦線部隊は女の花園だ。

 ちんちくりんで童顔な私……Dカップで喜んでいる場合じゃない。
 最後に選んだデザインは、私が一番いいな、と思ったもの。さっきのような格闘技をもう一回――そして私は、市ヶ谷副社長の前に差し出されたのだった。

「お待たせしました」

 嵯峨野さんの声につられて緊張が漲る。リビングのソファで寛いでまっていた市ヶ谷さんがこちらの部屋にやってくる。

 この姿を市ヶ谷さんに見られる……落ち着け、私。ちゃんとムダ毛の処理だってしたし、キレイにバストメイクもしてもらってる、これはファッションと同じだから!

 心の中で念じながら、部屋に入ってきた市ヶ谷さんを見つめた。ぎゅっと肩に力がこもる。だけど彼は……とくに色目で見ることなく、仕事の顔をしてチェックしはじめた。

 私は今、商品だから……彼にとってはそうでしかないのかもしれない。言い聞かせながら、どこか寂しいような複雑な気持ちで、彼の視線を追った。

「着やせするタイプみたいだね。サイズも変わったんじゃない?」

 何気なく言われた一言にドキッとして、視線が肌をすべっていく度、身体が熱くなった。一枚ずつこうして何通りも着せ替え人形していく、なんて……やっぱり荷が重たいよ。

 一体私はどんな風に映っているのだろう。ちゃんとキレイに映ってる? 少しは欲情したくなる?

 だってそうさせられなかったら誘うブラのモデルをした意味がないでしょ。一瞬で彼を虜に……一目惚れブラなんでしょ? 私じゃ力不足じゃない?
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