ひとまわり、それ以上の恋
◆10、Pussycat Dolls
嵯峨野さんが帰ったあと、私は普通に着替えてスーツに身を包んだわけだけど。二人の間には気まずい空気が流れていた。
さっきまでのことが頭から離れない。市谷さんもソファで長い脚を組んだまま黙りこんでいるし、失礼なことしてしまったのだと今さら反省していた。
「君は、大人しそうにみえて大胆だし、なんていうか無鉄砲だね。ちゃんと大人な面をもちあわせているのに、急に子どものように我儘になる。明日、販売部でヘンな噂が流れてないといいけど」
「ゴメンナサイ……」
私は身を縮めるばかり。私も私の性格を一番分かってる。猪突猛進……兄にもよくそう言われて叱られる。
さっきのは完全に私が悪かった。新人のクセに仕事からはみだしたりなんかして勘違いもいいところ。本当に情けない。
「すごくステキだったから、私でも自信がもてるような大きな気持ちになってしまって、聞いてみたくなってしまって、結果的に市ヶ谷さんが一番嫌うようなことしてしまって……本当に申し訳ありませんでした」
丁寧に頭を下げると、深いため息がこぼれてきて、ビクリと肩が震える。そのまま動けないでいると、グイと手を引っ張られてしまった。
「違うよ、菊池さん。そういうことで怒ってるんじゃない」
え……?