あなたがいたという記憶
無事全員が揃って、飛行機に乗り込んだ。
座席は華乃と隣だった。

飛行機の中はトランプしたり、恋の話をしたりとにかく楽しく、

不安などとうにわすれていた。

1時間ほどで北海道に到着した私たちは、バスに乗ってさらに移動していた。

「あー優!コアラのマーチちょうだい!」
華乃はお菓子を見つけるのが本当に早い。
そしてその情報を得た他の女子たちも、瞬く間に私のコアラのマーチへと手を伸ばして来た。

「あ、ずりー俺も!」
クラスの男子の太一郎も気づいて、
鷲掴みでコアラのマーチをかっさらって行った。

「うわっ!最低!どんだけとってるんだよ!みんな食べ過ぎー!!」
私は悲痛な声を上げた。

すると華乃が突っついて来た。
「え、何??」
華乃が指差す方に目を向けると、
そこには、


高橋くんが物欲しそうな目をしてこっちをみていた。笑

高橋くん…笑

「…いる?」

すると高橋くんは真顔で
「あ、ありがとうございます」
と言って取ろうとした。







…アリガトウゴザイマス??



私はコアラのマーチの箱をさっと下げて届かなくした。

高橋くんは「???」という顔をしたがそんなのどうでも良かった。


なぜ敬語なんだ??


「あのさ、タメで話そ!同学年なのに変じゃん?」

私は始めて、
高橋くんにまともな会話を仕掛けた。



高橋くんはちょっと驚いた顔をした後、








笑った。



今まで見たことない笑顔で笑った。
なんだか、優しく微笑んでいるみたいだった。


そして
「わかった」
と、短く一言いった。







笑顔に完全にやられた私は、
知らないうちにコアラのマーチを差し出していた。



そして高橋くんは
謙虚に一粒だけとって口に放り込んだ。



「ん、うまい」


子供みたいな笑顔の高橋くんに私は再びやられた。


少しだけ、距離が縮まった気がした。
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