下り坂


俺は自分の都合で優木を一人で行かせ、

怖い思いをさせてしまった。


なのになぜ優木は俺にお礼を言う??



「私の名前、初めて呼んでくれたね」



さっきまで怯えていたあの顔はどこかに消え去り、

とても嬉しそうな顔で

俺をじっと見つめていた。



「帰るぞ」



俺は、早くこの墓場の近くから出たいのもあって、

優木をひっぱってここを後にした。


今は、あれを思い出したくなかったから。







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