葵先輩は冷たい。
ーーあたしは愛に飢えている。
それは多分…
誰かに愛してもらった記憶が、ひと欠片も記憶の中に残っていないから。
両親からも愛されず。
親戚には嫌悪の目で見られ。
あたしは… "愛"を知らない。
人一倍愛に焦がれているのに、きっとあたしは誰よりも愛に縁遠い人間なんだろう。
だけど。
そんな全てを諦めていたあたしを救ってくれたのは、紛れもなく葵先輩で。あたしに人を好きになる気持ちを教えてくれたのも葵先輩だから。
例え葵先輩があたしを嫌いでも…
あたしは大好きなんだ。
葵先輩にしたらちっぽけなことだったかもしれないけれど、あの時のあたしには大きな光に見えた。
『葵先輩…』
好きです。大好きです。
頬に伝う涙をゴシゴシと服の袖で拭いながら、あたしはあの時のことを思い出していたーー