葵先輩は冷たい。




あたしが妾の子だと知らされたあと、すぐに母親は首を吊って自殺した。


父親は自分の保身のためか、母の死を表沙汰にならないよう隠蔽し。そしてひっそりと挙げた葬式にすら出席しなかった。



ーーあたしは息が出来なくなった。


吸って、吐く。
ただそれだけの行為が困難になった。吸っても、吐くことがで出来なくなった。



フラッシュバックのように頭に浮かぶ…… 穴という穴から体液を漏らし、そして苦渋の表情で死んでいる母の姿。




手が震え、そして同時に吐気がする。いつだって、あたしに付き纏うのは不安と焦り。そして、孤独だった。



出歩く時にはいつも鞄に紙袋を常備し、電車や人混みの多い所は避けた。


そんなあたしに医師が言ったのは、

"過呼吸症候群"
"パニック障害"

という病名で。


酷いストレスやトラウマ、不安からなる心の病だったー



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