葵先輩は冷たい。
何で付き合ってるの?
そう聞かれたら、
あたしは同情だと答えるだろう。
きっと…
葵先輩はあたしが嫌い。
それを裏付けるのは、目の前の光景で充分過ぎた。
「葵先輩…」
音楽室のドアを開くと、何人もの女の人と楽しそうにお話しする葵先輩の姿。
それはあたしが見たこともなく、向けられたこともない笑顔。
ー胸がズキリと痛んだ。
「葵、先輩…」
もう1度名前をそっと呼ぶ。
無駄だと分かっているけど。
ほんの少しの期待を込めて。
だけど、振り返った葵先輩は…
まるであたしなんかいないように、また女の子たちとのお話しに花を咲かせた。
辛い……
だけど、好き。
それはどうしようもないことだった。