葵先輩は冷たい。



あたしは視線を上履きへと落とし、そしてそのまま教室の1番後ろへと身を寄せた。


葵先輩はバンドを組んでいて。
透き通るような高く伸びる声で、観客を盛り上げる。いわゆる、ボーカルだ。


不定期で演奏会の様な催しを開いては、その度に多くのギャラリー達の心を鷲掴みにする。


葵先輩は…
まるで別世界の人のよう。


寄って集ってくる人達はみんな綺麗な人ばかりで。悔しいくらいに葵先輩とお似合いの人ばかりだ。


だから不安になる。



ねえ、葵先輩……

あたしは先輩にとって、
どんな存在ですか?



キラキラ輝く笑顔を振り撒く葵先輩に、あたしはそんな事を考えずにはいられなかった。



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