葵先輩は冷たい。




「あいつ、不器用なんだよ。」

「不器用…?」

「そう。分からないだけなんだ。
だから… 安心しなよ、莉子ちゃん。」



そう言ってあたしの頭を優しく撫でる神谷先輩。


だけど、あたしには神谷先輩が言った言葉の意味が分からなくて。

あたしは葵先輩を見つめた。



今だって、周りにいる女の人に媚をへつらう様に笑う先輩。


胸がモヤモヤする。

嫉妬なんて意味ないのに。
ウザいだけなのに。



薄っすらと目尻に涙が溜まっていることに気がついたあたしは、誰にも気付かれないうちにそっと制服の袖で拭った。



葵先輩は…
あたしには、遠い。


遠すぎて、手を伸ばしても… きっと届かないところにいる。


< 9 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop