葵先輩は冷たい。
「あいつ、不器用なんだよ。」
「不器用…?」
「そう。分からないだけなんだ。
だから… 安心しなよ、莉子ちゃん。」
そう言ってあたしの頭を優しく撫でる神谷先輩。
だけど、あたしには神谷先輩が言った言葉の意味が分からなくて。
あたしは葵先輩を見つめた。
今だって、周りにいる女の人に媚をへつらう様に笑う先輩。
胸がモヤモヤする。
嫉妬なんて意味ないのに。
ウザいだけなのに。
薄っすらと目尻に涙が溜まっていることに気がついたあたしは、誰にも気付かれないうちにそっと制服の袖で拭った。
葵先輩は…
あたしには、遠い。
遠すぎて、手を伸ばしても… きっと届かないところにいる。