蒼穹の誘惑
みずきはひどく焦っているに違いない。それは電話越しでもわかった。

声を聞くだけで、彼女を手に入れたい、彼女の全てを自分のものにしてしまいたい、そんな欲求が湧き上がる。

何故こんなに魅かれるのか自分でも分からなかった。

初めてみずきに会ったとき、電流が走り抜けるような衝撃を覚えた。

一目惚れなんて簡単な言葉で片付けたくない。

彼女を一度抱けば、この欲求も収まるかと思えば、それは逆にみずきへの想いを加速させるだけだった。

まるで麻薬のような恍惚感に囚われ、彼女が去ってしまえば、枯渇してしまいそうなほど苦しい。

出会って一か月も経っていない、それなのに頭の中はあの夜のみずきの妖艶な姿にたやすく占領されてしまう。

彼女を想えば、心苦しさに呼吸が乱れた。



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