蒼穹の誘惑
噂は聞いていた。

長谷川みずきは、一定の関係以上を誰にも求めない。

身体の関係を持ったとしても、自分の利益に繋がらなければ、簡単に切られる。

彼女自身、想いを寄せてくる男性には、その関係性を明確にしていた。

「スタディーな関係にはなりたくないの。それでもいいかしら?」

極上の肢体と蕩けるような笑顔で言われれば、単純な男たちは吸い寄せられるように頷くしかない。

彼女の魅力に獲りつかれた男の悲しい末路なども、尾ひれがついて噂され、「魔性の美女」、「孤高の女王」とも揶揄された。

浅野は身体だけの関係でも良いと思った。

一時の遊びでもいい、彼女に触れたい、そんな想いが、彼のみずきへの慕情を駆り立てた。

彼もまた、みずきの魅力に獲りつかれた悲しい男たちの一人だった。



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