蒼穹の誘惑
「とぼけるのもうまくなったな、裕哉。長谷川と業務提携の話が持ち上がっているそうではないか?」

「-----!何故、それを……?」

「私を誰だと思っている?」

鋭い双眸で上から見据える父に、浅野の声が震える。

「情報が早いですね」

「お前にしては良くやった。私の会社に入らず、こんなちっぽけな会社を建てたかと思えば、自堕落な生活をしていたお前も、少しは考え直したか?」

「どういう意味です?」

威圧的な物言いに腸が煮えくり返るが、浅野は拳を握りぐっと我慢する。

「長谷川を手に入れろ」

「----は?」

「聞こえなかったのか?長谷川エレクトロニクスを手に入れろと言ったのだ」

この父は一体何を言い出すのだろうか。

目を瞬かせて驚いていると、王者たる風格で座る父は、嘲笑を浮かべ、葉巻を一本取り出した。

それに火をつけ、口に咥えると、「お前は甘い」と低く零す。



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