蒼穹の誘惑
「大方、あの先代の娘に骨抜きにされたか?」

「…………っ」

突然、みずきのことを指摘され、浅野の顔がカァっと紅潮する。

「ほう、図星か?もう関係を持ったのか?それは好都合だ」

父はニヤリと笑い、冷たく言い放つ。

「利用しろ」

「なっ、何を……」

「お前の母親に似て生まれつき見てくれだけはいい。その綺麗な顔を有効活用するんだな。どうした?お前のこのちっぽけな会社が注目を浴びたのも、若さとその類まれな容姿のおかげだろう?」

沸騰寸前の怒りを震える拳を握ることでなんとか収め、父に向き合う。

「この顔で……この顔で彼女を落とせるならもうしてますよ」

「お前は……まさかあの小娘に本気で惚れたとは言わないだろうな!?」

「さぁ、どうでしょう。どのみちあなたには関係ありません」

今までこんな風に父に口答えしたことなどなかった。

だが、みずきのことを持ち出されては、浅野の怒りは父への畏怖の念をも凌駕した。



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